こんにちは、元臨床心理士の春井星乃です。
現在は、心理学・精神分析・エニアグラムを通して性格構造を明らかにする「イデアサイコロジー」を提唱しています。
コロナウイルスの感染者が日に日に増えていっていますね。
不安になったり、気分が落ち込んだり、イライラすることが増えた方もいらっしゃると思います。
これはこの状況では人間の心理反応として当然のことですよね。
イデアサイコロジーでは、ある個人の意識状態や性格を見る時に、遺伝や経験の他にエニアグラムタイプを重視していますが、みなさんはコロナ問題で特に精神的に不安定になりやすいエニアグラムタイプってあると思いますか?
今日は、このコロナ問題とエニアグラムタイプについて考えてみたいと思います。
コロナウイルスが世界中で猛威を奮い始めて私が最初に思ったのは、「タイプ1にとっては厳しい世界になりそう」ということでした。
今回は、その理由やタイプ1と不潔恐怖の関係、タイプ1以外の不潔恐怖を持ちやすいタイプなどについてお話してみたいと思います。
タイプ1の基本構造
「欲求・不安のコントロール度」と不潔恐怖
タイプ1以外の不潔恐怖を持ちやすいタイプ
2組のカップルの事例
先日、こんな記事を読みました。
亀山早苗の恋愛コラム
ここには、恋愛中の2組のカップルの事例が書かれています。
1つ目のカップルは、もともときれい好きの男性が、コロナウイルスを怖がり自宅にこもって彼女にも会いたがらなくなり、携帯も触らないので連絡もほとんどなくなったというケースです。
ちょっと引用してみますね。
新型コロナ騒動で彼が変わった……ミカコさんの場合
新型コロナウイルスの話題一色になった先月末あたりから、彼がデートを渋るようになったというのはミカコさん(32歳)だ。つきあって2年以上たち、週末はほとんど一緒に過ごしてきたのに、彼は急に変わった。
「会えない理由を聞いていたら、『とにかくウイルスが怖い』と。彼はラッシュを避けるために早朝の電車で出勤しているようなんです。私は接客業なので、『不特定多数の人と接しているミカコも怖い』って。じゃあ、おいしいものでも食べに行って体力つけようよと言ったら、人が集まるところはやめておいたほうがいいと。彼は週末、ずっと閉じこもっているみたい」
すでに3週間ほど会っていない。彼はスマホにウイルスが付着するのを怖れて、家に帰るまでほとんどスマホをいじらなくなったので連絡も夜、ときどき来る程度だ。
「最初は私に飽きたのか、他に誰かできたのかと疑ったんですが、本気でウイルスを怖れての言動みたい。彼のところはもうすぐ自宅勤務になるらしいので、ますます家から出なくなるでしょうね」
つきあい始めたころから、確かに彼のきれい好きには気づいていた。とはいえ潔癖症といえるほどのものではなかったし、きれい好きはいけないわけでもない。だが、こうなってみるとミカコさんは、彼の行動に首を傾げざるを得なくなった。
「怖いのはわかります。私だって感染は怖い。だけど一方で、今のところ私は出勤して接客しなくちゃいけないし、そういう私を怖がる彼の態度はあまり気持ちのいいものではありません。この先、私たちが結婚などしたら、どういう人生になるのかなとちょっと不安ですね。まあ、彼はこの騒動でおそらく結婚する気などなくしていると思いますけど」
ミカコさんの恋愛感情も一気にダウン。会いたいと思っていた気持ちが、今は「彼でいいのかな」に変わっている。思いがけないところで彼の本性を見たことがいいのかよくないのか、ミカコさんはいつもと変わらない生活を続けながら考えているそうだ。
2つ目は、女性の方が男性のズボラさに不満を訴えているケースです。
まったく気にしない彼にがっかり……ヨシミさんの場合
一方、彼がまったくこの騒動を気にしておらず、それが不安だというのはヨシミさん(34歳)だ。同い年の彼と同棲して1年がたつ。
「彼は帰宅しても、私が言わないと手を洗わない、うがいもしない。ぎゃんぎゃん言って、ようやく手洗いするくらいで。こんなに騒がれているのに、どうしてこんなに無頓着でいられるんだろうと不思議になります」
ヨシミさんは彼が帰宅すると自ら出て行って、玄関前でコートなどをパンパンと叩く。それから彼を自宅へ入れるようにしているのだという。本当は帰宅したらすぐに入浴してほしいのだが、彼は部屋着に着替えてすぐにだらだらとリラックス。
「私も仕事をしていますが、最近は朝晩、入浴しています。家で筋トレもしてる。彼のことも考えて栄養のバランスがいい食事も作っているんですが、彼はビールを飲みながら好きなおかずだけつまむ。相変わらず飲んで帰ることも多いし、酔って帰ってカップラーメンを食べて寝る、みたいなこともある。せっかく栄養を考えて作っているのにとがっかりすることもありますね」
彼はそんなヨシミさんに、「神経質すぎる。かえってストレスたまるよ」と言うのだそう。だが、どんなに気をつけても気をつけすぎることはないと彼女は思っている。
「日に日に感染者が増えるのを見ていると怖くてたまらない。彼はごく普通にセックスを求めてきますが、私はそれにも応じることができなくて。キスなんて絶対したくないですよね(笑)」
彼は拒絶するヨシミさんを悲しげな顔で見るというが、彼女は今月に入ってから寝室も別にした。念のためと彼には言ったが、彼はさすがに不愉快そうだったという。
「そんなにおかしいでしょうか。私は何も考えていない彼のほうが不可解なんですけど」
どうするのが正解なのかがわからない今、お互いの違いに戸惑っているカップルは多い。ここで納得いくまで話し合えるのか、お互いを認められないまますれ違うのか。ふたりのありようが試されているのかもしれない。
タイプ1の基本構造
この記事を読んで、私はかなりの確率で最初の男性と2番目の女性はタイプ1だと思いました。
どうしてそういえるのかを説明するために、まず簡単に、タイプ1の基本的な構造のお話をしてみますね。
イデアサイコロジーでは、タイプ1は、男根期(4〜6歳)の善悪の概念の世界で形成されるタイプだと考えています(詳しくは「エニアグラムタイプと意識の発達段階」をご覧ください)。
その中で、自分が「善ではない」とされる不安を基盤に作られるため、自分の中の善悪の基準を強く持つようになり、その基準による「善・完全性」というものを自分にも他人にも環境にも求めます。
また、タイプ1は「完全」を求めるところから、「清潔」「整理整頓」というところにも意識が向かいます。例えば、壁の絵が曲がっていたり、リモコンや本がいつもの場所にないことが非常に気になったりします。
そして逆に、自分が「善・完全でないこと」「不潔なこと」「散らかっている」に不安やイライラを感じるんです。
このようなフィルターで世界を認知しているので、他のタイプ、例えばタイプ3なら「優位に立つこと」、タイプ6ならば「みんなに好かれること」のような欲求を持つタイプよりも、格段にコロナウイルスに対する意識の向きやすさや恐怖が大きいと言えます。
「欲求・不安のコントロール度」と不潔恐怖
実際に、タイプ1と関連する心の病気に、強迫性障害の不潔恐怖という症状があります。俗に言う「潔癖症」ですね。
自分が汚いと感じて1日何回も手を洗ってしまうとか、つり革にさわれないとかですね。これは、今のコロナ出現後の世界では普通に思える行動ですが、タイプ1は何もなくてもこのような恐怖を持つ傾向があるタイプなんです。
ただ、タイプ1がみな不潔恐怖を持つわけではありません。
サイトの方にはまだ書いていませんが、同じタイプ1の人の中でも、この「善や完全性・清潔」に関する「欲求・不安」をどれだけコントロールできているかでその意識状態や思考・感情・行動に大きな違いが出てきます。
イデアサイコロジーでは、これを「欲求・不安のコントロール度」と呼んでいて、この欲求・不安のコントロール度が低下していくと、心の病気が生じると考えています。
つまり、タイプ1の欲求・不安のコントロール度が低下していくと不潔恐怖が出るケースがあるのですが、現在の状況は、タイプ1にとってはどうしても欲求・不安のコントロール度が低下しやすい状況だと言えるのではないかと思っているんですね。
環境がタイプ1の完全性や清潔さを保ちたい欲求を許さず、常に不安と向き合わされてしまうので。
でも、このタイプ1の欲求や不安に身を任せて感情的に振る舞っているだけだと、どんどんコロナへの不安や恐怖による行動が生活のメインになってしまい、先程のカップルのケースのように現実生活に支障を来してしまいます。
ですから、本来望ましいのは、「自分or彼はタイプ1だから人よりもコロナが気になるんだ」、「相手はタイプ〜だから感じ方が違うんだ」と理解して、お互いが感情をコントロールしながら歩み寄って解決策を探ることです。
タイプ1以外の不潔恐怖を持ちやすいタイプ
また、タイプ1以外にも、不潔恐怖を持ちやすいタイプもあります。
イデアサイコロジーでは、フロイトの乳幼児期の3つの発達段階(口唇期・肛門期・男根期)のそれぞれの親子関係の中で、欲求不満の経験で生じるタイプ、満足の経験で生じるタイプ、不安の経験で生じるタイプというものがあると考えています。
欲求不満 | 満足 | 不安 | |
男根期(4〜6歳) | タイプ2 | タイプ6 | タイプ1 |
肛門期(1歳半〜3歳) | タイプ8 | タイプ3 | タイプ7 |
口唇期(0〜1歳半) | タイプ5 | タイプ9 | タイプ4 |
タイプ1は不安の経験で生じるタイプで、そこにはタイプ4とタイプ7も入ります。この同じ不安系タイプの3つは、互いに影響しあい、意識発達の過程で似た傾向を持つようになる場合があります。
例えば、タイプ1がタイプ7の傾向を持ったり、タイプ4の人がタイプ1の傾向を持ったり、タイプ7の人がタイプ1の傾向を持ったりすることがあるんです。
私の臨床経験から、タイプ1以外にタイプ7も不潔恐怖になりやすいことが分かっています。
他のタイプが全くならないというわけではないのですが、この2つのタイプが圧倒的に多いです。
ですから、特にエニアグラムタイプ1と7の方、中でもタイプ1−9と7−8の方はコロナウイルスに意識を向けすぎてしまうと、そこに自分がコントロールされてしまう可能性があるので、客観性と冷静さを保つことを心がけてみてくださいね。