こんにちは、元臨床心理士の春井星乃です。
現在は、心理学・精神分析・エニアグラムを通して性格構造を明らかにする「イデアサイコロジー」を提唱しています。
「仕事・恋愛・人間関係の悩みを根本から解決!最も正確な自己分析のやり方」シリーズも、今回で第21回目となりました(まず↑の記事から順にお読みください)。
第1回から4回までは理論的な性格の構造の話、第5回から13回までは9つのエニアグラムタイプの特徴の説明、第14回から20回まではそれがみなさん一人ひとりの中でどのように表れているかを探る実践編でしたが、今回はいよいよこれらを全てまとめて、あなたの性格の全体像を探っていきたいと思います。
より分かりやすくするため、最初に2つの事例分析を行い「性格の全体像から実生活の悩みの解決策を知る方法」についてお話します。
<事例1>3種混合型20代女性:タイプ6−7のサブカル女子
まず、2つの事例を通して「性格の全体像」から「日常生活の改善法・対処法」がどのように導き出せるのかについて説明しましょう。
1つ目は、自己分析シリーズの最初の記事でお話した、職場の人間関係のお悩みを持っていた女性の事例です(細かい背景や設定は変えてあります)。もう一度、そのときの抜粋を載せておきます。
◉事例
たとえば、私の患者さんに「職場で同僚の女性たちに嫌われてるような気がする」という悩みを持っている女性がいました。
彼女は、「みんな忙しくてイライラしているだけかもしれない」「別に嫌われても仕事がデキれば問題ない」「できる範囲でにこやかに話しかけてみよう」と自分なりに考えて対応していましたが、なかなか状況は改善しませんでした。
彼女の場合は、実は同僚の中に問題を抱えた女性がいて、その女性が彼女の悪口をいいふらしていたことや、彼女自身の乳幼児期からの認知パターンや自己肯定感の低さ、そしてその自己肯定感の低さを補おうとして無意識に「マウント取り」をしていたことが周囲に嫌われる原因になっていました。
これに気づく以前は、彼女は自分の心のパターンにも無意識だったのですが、同時に、他人の状態を正しく分析することができず、同僚女性がそのような人だと全く思わなかったということです。その後、その同僚女性の悪い噂を耳にし、周囲は前から分かっていたことが目に入っていなかったことに気づくことができました。
この方のお話を、第14回から20回のチェックシートに沿って聞いていくと、以下のような結果になります。
外面的特徴 | 人懐こい・親しみやすい・優しい・甘え上手 丸顔で目が大きく、まつげが長い、中肉中背 |
エニアグラムタイプ | タイプ6−7 |
乳幼児期・児童期の自己・他者イメージ | 自己イメージ:小学校でいじめられる。自信がない。依存的。自分で決められない。 他者イメージ:自分を馬鹿にして見下すもの。 |
他者化の有無 中学生以降の経験 | 他者化:サブカル、娘・姉としての自分 中学でもいじめにあうが、高校・大学では普通に学生生活を楽しんでいた。 |
遺伝の影響 | 母親似:社交的・衝動的・客観的思考が苦手 |
この方は、エニアグラムタイプは意識化されていますが、乳幼児期・児童期の自己・他者イメージや他者化の影響も強く、3種混合型となります。
ただ、意識としては中学生以降の経験(他者化)の層に同一化しているので、それ以下の層の影響が無意識に行動や言葉の端々に出てしまい、どうしても無意識に「自分が上」ということを他人に示したくなってしまうということがあるようです。
この方の場合は、タイプ6の特徴から、特に自分よりも下の立場の人にそれが出やすい傾向があります。また、タイプ6は自分のセンスや選択、意志決定に自信を持てない方が多く、個性的なタイプ4的な世界に憧れを持ちます。なので、サブカル=タイプ4的な世界に興味を持ち、そこに他者化していく傾向もあります。
また、この方は遺伝的にも自分と客観的に向き合うのが苦手という部分があり、どうしても現状維持や楽な方に流される傾向があります。ただ、このまま他者化で生きていると、問題がずっと繰り返されることになりますので、まずはこの状態を改善したいという意志が大切です。
そのうえで、まず取り組む必要があるのは、乳幼児期・児童期の自己・他者イメージの影響を減らしていくことです。まだ心の奥深くに、当時の悲しみ・劣等感・悔しさ・怒りなどが蓄積している可能性もあるので、それを信頼できる人と共有し表現すること、そして、その時できた自己・他者イメージは本来の自分とは関係のないものであることを客観的に理解していくことです。
これができてくると、徐々に他者化によって安定を保たなくても大丈夫と感じられるようになり、他者化をやめる意志を持つことでその影響から抜け出すことができます。
ただ、エニアグラムタイプに同一化するには、まだ欲求・不安コントロール度が低めで、自分のタイプ6の部分にいいイメージを持てないでいます。
なので、タイプ6の長所・能力を発揮するために、この性格の全体像と自分が陥りやすいパターンを自覚しつつ、自分に合った目標を設定し行動していくことが望まれます。すると、エニアグラムタイプの欲求・不安コントロール度も上がっていきますので、人間関係の問題も起きにくくなっていくでしょう。
<事例2>エニア&他者化型20代男性:タイプ1−2の恋愛工学生
次に、エニア&他者化型の20代男性の事例です。
この方は、数年前から書籍やネット上などで流行りの恋愛工学にハマっている男性です。恋愛工学とは、男性向けの、女性と関係を持つことを目的にした技術的な方法論、マニュアルといったものです。
この方のお悩みは「恋愛工学を学んで何回か女性と付き合うことはできたが、毎回振られるか自分が飽きてしまって続かない」といういうものです。
第14回から20回のチェックシートに沿って、この方の性格の全体像をまとめると以下のようになります。
外面的特徴 | クール・頭脳派・早口・話し上手・物怖じしない 目は細くツリ目ぎみ・顔は細い・身体も華奢で細め |
エニアグラムタイプ | タイプ1−2 |
乳幼児期・児童期の自己・他者イメージ | 自己イメージ:いじめはなかったが、親しい友人も特にいなかった。あまり記憶がない。 他者イメージ:母親が教育熱心でひたすら勉強させられたが、普通だと思っていた。特にない。 |
他者化の有無 中学生以降の経験 | 他者化:恋愛工学・仕事の立場 親の言うままに努力し、第1志望の会社に入社。数年後、人間関係で悩み退社。現在は安定して働いている。 |
遺伝の影響 | 母親似:頑固、マイペース |
この方は、エニアグラムタイプは意識化していますが、他者化の影響が大きいエニア&他者化型となっています。
ただ、この方の場合は、乳幼児期・児童期の自己・他者イメージの影響は表面的にはあまりないように見えますが、記憶が薄くあまり具体的な情報が出てこないため、この層については盲点となっている可能性が高いです。
この方のお悩みは「恋愛が長続きしない」ということですが、まず他者化していると、エニアグラムタイプの欲求・不安や乳幼児期・児童期の自己・他者イメージから生じる感情、その他の感情が意識しにくくなっていきます。
人間は、他人を見る時に無意識に「自分だったらこうする」という視点から見てしまうものですが、自分の欲求・不安、感情が意識できていないと、当然他人の欲求・不安、感情などの深い部分の繊細な動きをつかむことができません。すると、当然、共感や理解、信頼感を得ることは難しくなります。
また、タイプ1−2の男性は特に感情を扱うのが苦手な方が多く、どうしてもすべてを思考や理論、マニュアルで解決したくなる傾向があります。すると、他者化の作用と同様に、相手との共感や理解、信頼感を得ることが難しくなります。
その一方で、孤独感はかなり大きいので更にマニュアルに依存するけれども、それでは上手くいかないことが多いので、結局孤独感も増すという悪循環に陥りやすいんですね。
そうなると、敏感な女性は不満を持ち振られてしまうし、それが分からない女性に対しては本人が飽きてしまうということになります。
なので、この方の場合、恋愛工学のスキルは使えるところは使ってもいいと思いますが、まずは自分の感情、とくに乳幼児期・児童期の親子関係と向き合い、整理する必要があります。そのうえで、日常生活でも感情を意識しながら過ごし、タイプ1−2の欲求・不安コントロール度も上げ、能力を活かしていけるといいですね。
1人で難しい場合は信頼できる人に話を聞いてもらうか、臨床心理士などの専門家に相談するのも1つの方法です。
性格の全体像を見てはじめて問題の本質と改善策が見えてくる
このように、たとえば事例1のサブカル女子の方のお悩みに「自分からにこやかに話しかけてみたら?」「嫌われたっていいじゃない。仕事に集中して認められればいい」などとアドバイスして、そのときうまく問題が軽減したとしても、この方の本質的な問題は解決されないまま終わってしまうんですね。それどころか、本質的な解決の機会を奪ってしまうことになります。
これは、事例2の男性についても同じで、たとえば「彼女の誕生日にサプライズをしてみたら?」「話を聞いてあげたら?」などとアドバイスしたとしても、長期的に見れば問題は解決されないまま残り、また同じ問題が繰り返し表面化することになります。
なので、性格の全体像を見てはじめて、その方の本質的な問題点と改善策が見えてくるんですね。
あなたの性格の全体像は?
前置きの説明が長くなりましたが、これから第14回から20回までの実践編で掘り起こしてきた材料を使って、あなたの性格の全体像を捉えていきましょう。
上の2つの事例を参考に、以下の表にあなたの【チェックシート1〜7】の結果を書き込んでみてください。
中学生から現在の経験はここで初めて書くことになりますが、自分の人生で大きな出来事だと感じることを書いてください。乳幼児期・児童期の自己・他者イメージの欄は、乳幼児期・児童期の中で最も自分にとって影響力が強く重要だと思うものを書いてください。
さて、あなたの性格の全体像は見えてきましたでしょうか。
現在、お悩みがある方、改善したいところがある方は、その問題点がどこの層から来ているかを見てみてください。
それが分かったら、第20回の記事で出た「性格の4つの層の同一化の型」の説明や各エニアグラムタイプの特徴の記事を参考にして改善法を考えてみてくださいね。