こんにちは、元臨床心理士の春井星乃です。
現在は、心理学・精神分析・エニアグラムを通して性格構造を明らかにする「イデアサイコロジー」を提唱しています。
「仕事・恋愛・人間関係の悩みを根本から解決!最も正確な自己分析のやり方」シリーズの第5回目の記事です(まず↑の記事から順にお読みください)。
いよいよこの記事から、具体的な各タイプの特徴の説明に入ります。自分や周囲の人たちに当てはまるかどうか考えながら、読んでみてくださいね。
この内容を頭に入れておいていただくと、後で行うエニアグラムタイプ診断がやりやすくなります。
では、さっそくタイプ1(裁判官)の内面的特徴からはじめましょう!
タイプ1の自己・他者イメージ
第2回「フロイトの意識発達理論とエニアグラムタイプ」の記事で、タイプ1は「いい子ではない」という不安をベースに形作られるとお話しました。
これは、親から善悪の基準で判断され、評価されていないと感じる経験から生じてきます。
具体的には「なんで言うこと聞かないの!」「こんなに汚して!」などと親から叱られたり、「この子はぜんぜんお手伝いしない」「兄弟と比べていい子ではない」と親から思われていると感じたり、そこまで行かなくても、常に親から善悪で判断され評価されていないと無意識に漠然と感じ取っている場合も、タイプ1の世界観が形成されます。
そこから、
自己イメージ:善と認められない不安を持つ自分
他者・世界イメージ:善ではないと判断してくるもの
という自己他者イメージが作られます。
すると、その不安から逃れるために「自分が善である」と感じることが必要になってきます。
タイプ2(看護師)は、他人から善と認められるために動きますが、タイプ1は、あくまでも「自分の中での善」であることが重要なのです。
タイプ1は「正しくありたい」「完璧にものごとを遂行したい」「きちっとしたい」「計画通りに進めたい」などの欲求を持ちますが、これらは全て自分の中の基準であることがポイントとなります。
タイプ1の好きなこと・嫌いなこと
そして、タイプ1は、すべての物事をそのタイプ1の枠組み、フィルターを通して認知するようになるため、世界は「善悪の概念の世界」に見え、その中で自分と周囲が自分の基準で善であることを求めるようになります。
思春期になってそのタイプ1の枠組みが浮上してくると、「自分と周囲の人たちを、自分のこうあるべきと思う状態にしたい」という欲求とそれができない不安が感じられるようになります。
そうなると、タイプ1の人は「自分と周囲が、自分がこうあるべきと思う状態」であることに快感やうれしさ、楽しさを感じることになります。
タイプ1の「こうあるべき」は善悪の概念に基づいているため、正しさや完全性、効率、計画性、清潔さ、整然としていることを求めます。
好きなこと | 自分と周囲を自分の「こうあるべき」と思う状態にすること・計画通りに行動すること・仕事を完璧にこなす・掃除・洗濯・整理整頓 |
嫌いなこと | 自分と周囲が自分の「こうあるべき」と思う状態にないこと・計画通りにものごとが運ばない・汚いもの・下に見られる |
長所 | 計画性・正確性・合理性・効率性・状況分析・事務作業・話し上手・社会的行動・芸術的センス |
短所 | 完全主義(自罰他罰)・人に任せられない&頼れない・自己中心的・思い込みが激しい・プライドが高い・気持ちを察してほしがる・潔癖・ナルシスト・過度に周囲に合わせる・依存 |
趣味 | 社会経済分析・政治・環境動物保護・哲学思想・芸術全般・ペット・スピリチュアル(占星術など) |
仕事 | 法律政治経済関係・経営者・銀行・経理・公務員・社会学哲学研究者・芸術関係 |
したがって、このタイプ1の特徴は仕事や家事の場面でより出やすくなります。仕事を完璧に、効率よく、計画通りにこなすこと、掃除洗濯・整理整頓などの身の回りを清潔に保つことなどに快感を覚えます。
日々の生活においても、やるべきことを完璧にこなし、規則正しく効率よく過ごすことを好む傾向があります。
そして、逆にこれらが達成できないとイライラや不安が出ます。
自分がそれらを達成できないときはもちろんなのですが、周囲の人たちや政治、世界の情勢が自分がこうあるべきと思っている状態から外れることにも同じように憤りを感じ、なんとかしてその状態を正したいという気持ちが生じます。
日常生活のレベルでは、壁にかかっている絵画の傾きが気になったり、本やリモコンが決まった場所にないと落ち着かないというのも、タイプ1に見られる傾向です。
またタイプ1は、前提として、常に完全で正しくありたいという強い欲求がありますので、他人に舐められたり、下に見られることを非常に嫌います。
そのため、基本的には自信家で強気という印象を人に与える事が多いです。柔らかい雰囲気の方もいますが、それでもどこか超然とした完全性のような雰囲気を持っていることが多いです。自分の容姿にも完全性を求めるのでナルシスト的傾向を持つ場合もあります。
タイプ1の長所
このような傾向から、タイプ1の長所は、仕事の遂行能力が高い、効率よく動く、計画性がある、事務処理能力が高い、状況分析力がある、きれい好きなどとなります。社会的な行動全般が得意なしっかり者です。
また、タイプ1は頭の回転が早く、話し上手です。人前でもよどみなく、理路整然と話すことができます。早口の傾向もあります。
エニアグラムタイプの中で話し上手といえばタイプ1とタイプ3、タイプ7ですが、今話題のYouTuberにもタイプ1とタイプ7が比較的多いように思います。
また、第2回の記事でお話したように、タイプ1は不安系のタイプで、意識が内側に向かうため創造力や芸術的センスに優れています。
「欲求・不安のコントロール度」が高い場合は、状況に合わせて適切に欲求・不安をコントロールできるので、タイプ1の欲求をこのような長所として、日常生活に活かすことができるのです。
ただ、タイプ1の人は複雑なところがあって、自分の完全主義や「こうあるべき」という信念に縛られることが苦しくなり、もう「こうあるべき」はやめようとする場合があります。
これは意識的に決意する場合と無意識的にそうなっていくケースがあります。すると、タイプ1の人は楽しいこと、ワクワクすることに目を向けるようになります。
特に無意識的に楽しさを追求するようになっている場合、自分のことをタイプ7(芸人)と判定しているタイプ1の方が多いです。
しかし、内面的特徴をよく見ていけばタイプ7とは違うと分かりますし、外面的特徴にも大きな違いがあります。
また、タイプ1は社会や世界の情勢分析に興味を持つと言う点で、自分をタイプ5(研究者)だと判定する方も多いのですが、同様に内面的特徴にも外面的特徴にも大きな違いがあります。この違いについては、第16回の記事で詳しくお話しますね。
なので、タイプ1が目指すべき理想像は、タイプ1の長所を保ったまま、完全主義よりも楽しさを生きる指針にしつつ、他人との共感や絆を深めていくという状態になります。
ただ中には、本当にちゃらんぽらんで快楽主義で適当な生き方になってしまう場合やタイプ1の特徴を抑圧して「他者化」をしてしまう場合もありますので、あくまでもタイプ1に軸足を置くことが重要です。
タイプ1の短所
では、次にタイプ1の短所に移りましょう。
タイプ1の短所は、まず、完全主義で自分や他人を責める傾向、自分のルールや考えを周囲に押し付ける、他人に任せられない&頼れない、潔癖などとなります。
これは、タイプ1の「こうあるべき」という欲求が強くなりすぎ、状況によって適切にコントロールできない場合に生じてきます。
「こうあるべき」が強くなりすぎ、欲求・不安のコントロール度が更に下がっていくと、強迫性障害や強迫性人格障害を発症していくことになります。
また、タイプ1の短所として、自己中心的になりやすい、思い込みが激しい、客観的思考が苦手というものがあります。
タイプ1は、本来は状況分析力や合理性、客観性に富んでいるタイプなのですが、欲求・不安のコントロール度が下がっていくと思い込みが激しくなっていき、自分の主観だけで物事を判断、断定する傾向が出てきてしまいます。
私の臨床経験では統合失調症の妄想型にはタイプ1が多いのですが、これがひどくなると妄想的になり、統合失調症につながっていくのではないかと考えています。
加えて、「自分が言わなくても、他人に自分の気持ちを察してほしい、自分の思う通りに動いてほしい」という傾向も出てきます。
周囲の環境について、自分が「こうあるべき」と思うことを自分ではなく他人にやってほしいと感じ、他人が気づかないと「なんでやってくれないの?!」と怒りが出てしまうケースがあります。
他のタイプからすれば「自分でやればいいのに」「言えばいいのに」と思いますが、そこがタイプ1の複雑なところで、自分でやると自分ばかりが損をしたり、「こうあるべき」に縛られて疲れてしまうのが嫌だという理由があるようです。
また、自分が「〜してほしい」と言ってしまうとその言葉の責任を負うことになることや、自分の考えの押しつけをすることで人に嫌われたくない、自分が頼むことに対してプライドが許さないなどの理由もあるようです。
このような傾向を「察してちゃん」といいますが、これはタイプ1の欲求・不安のコントロール度の低い人の傾向を指しているように思います。
また、不安系のタイプ1・4・7は自分の内面に意識が向かうタイプですが、欲求・不安のコントロール度が低下すると、どのタイプも孤独を感じやすい傾向があります。
タイプ1もコントロール度が低くなっていくと、嫌われることを恐れるため過度に周囲に合わせてしまうケースもあります。
また、特に女性に多いのですが、タイプ4(芸術家)がなりやすい境界性人格障害のような特徴を生じることもあります。これは退行の方向性の「タイプ4化」といえます。つまり他人の愛情を求め、得られないと自傷行為を繰り返すという傾向です。
ただタイプ4の自傷行為は存在確認のためであるのに対し、タイプ1の自傷行為は罪悪感や孤独感、完全でない自分に対する絶望感を払拭したり、口で言えない自分の気持ちを伝えるためであることが多いという違いがあります(詳しくは「【新説】”メンヘラ”には3種類いる? 近年増えてきた「完全主義タイプ」とは」(ココロジー記事)、「メンヘラ(境界性人格障害)にエニアグラムタイプ4とタイプ1が多い理由」をご覧ください。)
このような場合、摂食障害を併発する傾向もあります。
タイプ1の趣味と仕事
さて、以上のような傾向から、タイプ1は次のようなことに興味を持つようになります。
社会や経済・政治の情勢分析、環境動物保護問題、思想・哲学、芸術全般などです。
また、音楽鑑賞を趣味にしている場合、クラシックを好む方が多いのも特徴的です。占星術等の体系的なスピリチュアル系の理論に興味を持つ場合もあります。
また、タイプ1は言葉による概念世界の善悪の基準で生きているため、人間同士の深い感情の交流や共感が苦手な方もいます。なので、人間との関係を面倒に感じて、ペットを家族のように大切にする傾向があります。
最後に仕事ですが、タイプ1の欲求や長所を活かしやすい仕事は、法律・政治・経済関係、経営者、銀行、経理、公務員、社会学・哲学研究者、芸術関係などとなります。
つまり、感情世界ではなく、概念の世界で早く正確にこなすことが必要な仕事、社会・経済・政治の情勢分析、社会や世界を正しく変革すること、芸術を追求することです。
もちろん、タイプ1でもこれ以外の仕事についている方が大半だと思われますが、どのような仕事でもタイプ1の長所を活かしていくことで、やりがいや生きがいを感じられるようになります。
タイプ1−9の外面的特徴・有名人事例
では、つぎにタイプ1の外面的特徴にいきましょう。
エニアグラムタイプの外面的特徴はサブタイプによって変わってきますので、外面的特徴はサブタイプごとにお話していきますね。
その前にまず、タイプ1に共通した外面的特徴をお話しておきましょう。
タイプ1は外面的特徴として、基本的に超然として、完全性を維持しようとしているような雰囲気を持ちます。根本的には自信家で威厳がありますが、それを表に出さない上品さとクールさを持つことが多いです。
また、笑顔が少なく無表情になる傾向もありますが、それは笑うと完全性が崩れると感じるせいなのかもしれません。タイプ7に近づくと、この超然とした雰囲気がやや柔らかくなり、親しみやすさが加わります。
このタイプ1に共通した外面的特徴に加え、タイプ1—9はタイプ1—2に比べると、より華やかで洗練されスタイリッシュな雰囲気を醸し出します。
顔の特徴としては、切れ長の目で涼し気な整った顔になることが多く、美男美女が多いです。目が離れぎみになるケースもあります。身体の特徴としては、足が長く、スタイルがよい人も多いです。
では、これが現実の人間にどのように表れるのか、芸能人や有名人、知識人の例をあげてみましょう。エニアグラムタイプは、男性・女性で表れ方が異なりますので、男女で分けて説明していきます。
◉タイプ1−9の男性有名人
イケメン系 | 竹野内豊・金城武・稲垣吾郎・市川海老蔵・渡辺謙・堂本光一・滝沢秀明・東山紀之・武田真治・山本耕史・ISSA |
個性派系 | ASKA・北川悠仁・小田和正・松山千春・西村博之(2ちゃんねる開設者)・宮台真司(社会学者)・田原総一朗(ジャーナリスト)・イチロー・元貴乃花 |
芸人系 | 藤森慎吾・春日俊彰・高橋茂雄・秋山竜次 |
◉タイプ1−9の女性有名人
清楚系 | 北川景子・杏・波瑠・多部未華子・小松菜奈・深田恭子・小倉優子・木村佳乃・片瀬那奈 |
個性派系 | 中島美嘉・沢尻エリカ・JUJU・工藤静香・菜々緒・吉田美和・古閑美保 |
芸人系 | 松嶋奈緒美・横澤夏子・たかまつなな |
同じタイプ1—9の男性・女性でも、遺伝や経験の違いによって様々な表れ方をします。私は、タイプ1−9の有名人は大きく分けると男性女性ともに上記の3つの系統に分かれると考えています。
少し常識的な理想像に合わせた「イケメン系・清楚系」と、タイプ1の傾向を全面に出した「個性派系」、そして面白いことを追求する「芸人系」です。
タイプ1—9の有名人には、ミュージシャン、とりわけ作曲も行うシンガーソングライターが多い傾向があります。ですが、最も多いのは俳優・女優です。また、知識人・学者系も多いです。タイプ1にはタイプ7化する傾向がありますので、芸人にも多いです。
タイプ1−2の外面的特徴・有名人事例
タイプ1—2はタイプ1共通の外面的特徴に加えて、やや重厚で真面目な雰囲気となります。
顔の特徴としては、目が神秘的な雰囲気で印象的、まつげ眉毛が濃く、鼻筋が通っている傾向があります。身体はタイプ1—9と比べるとそこまでスタイルが良い傾向はありません。
◉タイプ1−2の男性有名人
イケメン系 | 阿部寛・唐沢寿明・松山ケンイチ・三浦春馬・宮本恒靖 |
個性派系 | 安住紳一郎・坂上忍・東浩紀(哲学者)・竹中平蔵(経済学者)・メンタリストDaiGo・苫米地英人(認知科学者) |
芸人系 | 西野亮廣・劇団ひとり・東野幸治・設楽統・加藤浩次・村上健志 |
◉タイプ1−2の女性有名人
清楚系 | 天海祐希・満島ひかり・南沢奈央・荒川静香・草刈民代・竹内結子 |
個性派系 | 一青窈・高木美保・東尾理子・遠野なぎこ・室井佑月・三浦瑠麗(政治学者)・夏井いつき(俳人) |
芸人系 | 井森美幸・鳥居みゆき |
タイプ1—2の有名人も1—9と同様、男女ともに3つの系統に分かれます。タイプ1—2は、1—9に比べるとミュージシャンは少ない印象ですが、俳優女優が多いのは1—9と同じです。
また、1—9と比べると、さらに道徳的な意識が強く、弱者の視点から政治や社会情勢、環境動物保護運動などにより興味を抱きやすい傾向があります。
また、1−2男性は1−9男性よりも、経済アナリストや経営者に多い印象があります。
加えて、1−2のこれも特に男性によく見られるのですが、自分の感情を見るのが苦手で、思考や理論を重視してマニュアル的に行動する傾向があり、心理学系の知識に興味を持つケースもあります。
したがって、恋愛などの深い人間関係を築くのは苦手なのですが、内面的特徴のところでお話したように、タイプ1の共通の特徴として孤独感は非常に強いので犬や猫などのペットに癒やしを求めるケースも多いです。
そして、タイプ1—9と1—2両方のイケメン系にも特徴があります。他のタイプにもイケメン系はいるのですが、タイプ1のイケメン系は本当に完璧すぎて笑ってしまうくらいカッコいいです。
1—9では竹野内豊さん、金城武さん、1—2では阿部寛さん、宮本恒靖さんなどです。顔の作りもそうですが、なんと言ってもその醸し出す雰囲気が「ザ・イケメン」なのです。海外の俳優さんでは、タイプ1—9はオーランド・ブルーム、タイプ1—2はビゴ・モーテンセンなんかがこのタイプです。
タイプ1—9、1—2ともに、容姿に恵まれ自信家で話もうまく、ビジネス系と芸術系の両方に才能を持つ珍しいタイプなので様々な分野で活躍しやすい傾向があります。
1−9はやや芸術系寄り、1−2はややビジネス系寄りという傾向もあります。
これから残りの8タイプの特徴をお話していきますが、各タイプの有名人たちの雰囲気を頭に入れていくと自分や周囲の人のエニアグラムタイプ判定が可能になっていきます。
感覚で構いませんので、共通した雰囲気をつかんでいただけると嬉しいです。