こんにちは、元臨床心理士の春井星乃です。
現在は、心理学・精神分析・エニアグラムを通して性格構造を明らかにする「イデアサイコロジー」を提唱しています。
「仕事・恋愛・人間関係の悩みを根本から解決!最も正確な自己分析のやり方」シリーズの第9回目の記事です(まず↑の記事から順にお読みください)。
今回は、エニアグラムのタイプ5(研究者)の特徴についてお話します。
前回同様、自分や周囲の人たちに当てはまるかどうか考えながら読んでみてくださいね。
タイプ5の世界観と自己・他者イメージ
では、タイプ5の内面的特徴からはじめましょう。
第2回「フロイトの意識発達理論とエニアグラムタイプ」の記事で、タイプ5は口唇期(0歳から1歳半)の「自分と自分じゃないものの世界」で「自分じゃないもの=世界と一体化できない」という欲求不満をベースに形作られるとお話しました。
第2回の記事で書いたように、アメリカの心理学の実験で、お母さんが不安だったりイライラしていたりすると、それは赤ちゃんに伝わるというものがあります。
そうすると、たとえば、赤ちゃんが母親の胸に抱かれておっぱいを飲んでいる時、母親が不安感を持っていると赤ちゃんはそれを敏感に感じとって、「自分じゃないもの=母親=世界と一体感が持てない」「飲み込みたいのに飲み込めない」という感覚を持つことになります。
すると、
自己イメージ:「自分じゃないもの=世界」を飲み込めない、一体化できない自分
他者・世界イメージ:「飲み込めない」もの、自分を受け入れてくれないもの
という自己・他者イメージができあがります。
タイプ5の好きなこと・嫌いなこと
思春期になると、タイプ5は、この口唇期の「自分じゃないもの」を投影して、抽象的な世界や社会全体・環境全体・外部という形で感じ取るようになります。
そして、この世界観の中で自分を守るため、これらを「飲み込みたい」という欲求が生じ始めます。
口唇期の、抽象的で漠然とした「自分じゃない世界を飲み込む」ことは、思春期以降のタイプ5にとっては「知識として取り込む・理解する」ということに変換されます。
特に、世界を1つのシステムとしてみて、その構造や法則、隠された真実を探り出すこと、それによって様々な現象に説明がつくということに非常に快感や喜びを感じます。
同時に「飲み込めない」「自分を受け入れてくれない」世界に恐怖を感じるようになるので、家の外全体の環境や、タイプ1やタイプ3の得意な資本主義社会全体に苦手意識があります。
特に会社や銀行、役所関係の何らかの手続き、申込みの電話などに不安を感じやすい傾向があります。
また、社会的基準で判断されたり、縛られたり強制されることにとても抵抗感を感じます。
人前で話すことや、大勢の人と広く浅く関わることも苦手です。なので基本的に、安心できる空間で1人で過ごす時間、もしくは本当に分かり合える親しい人と過ごす時間が必要と感じるタイプです。
好きなこと | 世界の法則や構造、真実を探り出すこと・安心できる空間にいること・分かり合える親しい人と過ごすこと |
嫌いなこと | 会社、銀行、役所などの社会全般と関わること・社会的基準で縛られること・人前で話すこと・大勢の人と広く浅く関わること |
長所 | 洞察力、観察力が高い・革新的・物腰が柔らかい・共感能力が高い・正直 |
短所 | 消極的・非社交的・閉じこもる・ストレートに物を言いすぎる・頑固 |
趣味 | 科学(特に数学・物理学)や文系の研究全般・芸術系・ファンタジー・SF・スピリチュアル系 |
仕事 | 研究職・1人でできる仕事・創作系 |
タイプ5の長所
このような傾向が継続すると、洞察力や観察力が高い・共感能力が高い・革新的・物腰が柔らかい・正直などという長所が現れます。
タイプ5は、常識や社会的ルールを破るのは怖いのできちんと守りますが、現存の社会的常識、基準自体に圧迫感を感じているので実はあまり価値を置いていません。
なので、考え方は革新的で新しいもの好きです。また、事実を重要視するので、真実絶対主義で正直という一面もあります。
そして、更に欲求・不安のコントロール度が上がると、以上の長所を保ったまま、社交的になってきちんとした社会人として仕事をこなし、人前でも堂々と話しリーダーシップを発揮するようになります。
タイプ5の短所
逆に、欲求・不安のコントロール度が低い状態だと、何に対しても消極的で非社交的、拒絶的になり、閉じこもる傾向が生じてきます。
コントロール度が下がると同様に人との接触を回避するタイプ6は、人に好かれたい気持ちが強いため、眼の前の人に嫌われたり、否定されたり馬鹿にされることを恐れますが、タイプ5は人に好かれたいという思いはあまりありません。
ただ社会全体に苦手意識があって、社会や人と関わりたくない、一人の方がラクと感じる傾向があります。
そして、大勢の人と関わるパーティーやスピーチ、プレゼンなどを過剰に恐れるようになります。このような傾向が悪化すると、社交不安障害となっていきます。
また、タイプ5は普段は控えめで物腰柔らかいタイプなのですが、自分が真実だと思うことは、その場の状況や相手の気持ちを考えずにズバッと言ってしまう傾向があります。
「人に嫌われたくない」「人を傷つけたくない」という思いよりも「真実を大事にしたい」という気持ちが勝ってしまうのです。
なので、周囲がびっくりして「この人は2面性がある」と感じてしまいます。でも、当の本人は全く悪気はなく、「本当のことを言っただけなのに、なんで怒られるんだろう」と不思議に思ってしまうということが生じやすいです。
また、一度決めたら、他人に何と言われようと考えを変えない頑固なところもあります。
タイプ5の趣味と仕事
次にタイプ5の趣味に行きましょう。
タイプ5は、科学や文系の知識全般に興味を持ちやすいです。自分が興味を持った分野は徹底的に調べ、体系付けるところまで持っていこうとします。男性は特に、物理学や数学の純粋な構造の世界に惹かれる方もいます。
また、タイプ5は現実社会に常に圧迫感を感じているので、そこから逃れられるファンタジー・SFやスピリチュアル系の知識を好む傾向があります。
特に、体系的な占星術や宇宙論、古代文明などに興味を持ちやすいです。ただ、中には科学や思想、スピリチュアル系の知識に同一化して「他者化」が生じてしまう場合もあります。
また、タイプ5は深みを感じる世界を好むので、タイプ1・4・7ほどではありませんが、芸術系全般にも興味を持ちやすく、美的センスに優れた人もいます。
仕事は何らかの研究職に適性が高いとが言えますが、どんな仕事でも、タイプ5の「世界を知りたい」「法則を見つけ体系づけたい」という欲求を活かせるものや、洞察力・観察力を活かせるものならやりがいを持って取り組めるでしょう。
1人でできる仕事、プログラミングやデザイン、イラストや文章を書くなどの創作系の仕事にも適性があります。
タイプ5−4の外面的特徴・有名人事例
タイプ5−4は、全体的に控えめで純粋で物腰の柔らかい印象ですが、奥には警戒心の強さと外部への拒絶感を持ち、タイプ4の要素である感受性の高さも秘めているという雰囲気を持っています。
顔の特徴としては、面長で、切れ長のややタレ目気味の目、鼻が高くスッキリとした印象を持つ傾向があります。身体は、特に男性に、ひょろっとした痩せ型の人が多いです。
タイプ5は全体としても人数が少なめで、かつ人前に出るのが苦手なためか、特に、テレビに出るような女性有名人が少ない傾向があります。十分なサンプルが取れなかったので男女一緒にお話します。
◉タイプ5−4の有名人
イケメン系 | ディーン・フジオカ・神木隆之介 |
個性派系 | 草野マサムネ・青木隆治・楳図かずお(漫画家)・前田裕二(実業家)・塩田元規(実業家)・澤口俊之(脳科学評論家)・今敏(アニメ監督) |
芸人系 | ヒロシ・博多大吉・矢部太郎・馬場裕之・鉄拳・ツネ(2700)・ゆりやんレトリィバァ |
タイプ5−4も、「イケメン系」「個性派系」「芸人系」に分けることができますが、タイプ1や4に比べると、大きな雰囲気の違いはありません。芸人系にやや親しみやすさが加わる感じです。
「芸人系」は、5−4の弱々しい感じを売りにするタイプと、洞察力やセンスを売りにするタイプ、ゆりやんのような社会への恐怖を振り切ってしまっているタイプに分かれます。
また、タイプ5−4はタイプ5−6よりも科学や文系の知識、思想に興味を持ちやすく、帰納的思考法を取る傾向があります。世界や社会の事実を観察し、抽象化することによって法則性を見出すという思考法です。
タイプ4−5も「世界とはなにか」ということに興味を持ち、思考を得意とする点で類似しているのですが、タイプ4−5はあくまで自分の思考や直感を使って答えを導こうとします。
つまり、タイプ4−5は哲学的で演繹的思考法、タイプ5−4は科学的で帰納的思考法を取るという違いがあります。
不安系(1・4・7)は意識が内面に向かい、欲求不満系(2・5・8)は意識が外面に向かうという傾向からこの違いが生まれるのではないかと考えられます。
タイプ5−6の外面的特徴・有名人事例
タイプ5−6は、控えめで物腰が柔らかく純粋さを持ち、警戒心を奥に秘めているという点は5−4と同じですが、タイプ6の要素が入っているため5−4よりも親しみやすく人懐こい雰囲気を持っています。
顔は、5−4と同様、面長、目はややタレ目で鼻が高い傾向があります。身体は5−4に比べるとそこまで痩せ型の人は少ない傾向です。
◉タイプ5−6の有名人
繊細ないい人系 | 草なぎ剛・伊藤一朗(ELT)・石井一久・浜口京子・鈴木重子(ヴォーカリスト) |
タイプ5−6は全体数が少なく、「繊細ないい人系」の1系統のみとなります。
5−6は、5−4に比べると、知識の体系化や研究を突き詰めるケースは少なく、どちらかというと人柄や、深みを芸術系で表現することを売りにするケースが多いようです。
5−4、5−6とも人前に出るのが基本的に苦手なのでテレビで活躍する方は少なく、研究者や作家などに多いと推測されます。