こんにちは、元臨床心理士の春井星乃です。
現在は、心理学・精神分析・エニアグラムを通して性格構造を明らかにする「イデアサイコロジー」を提唱しています。
「仕事・恋愛・人間関係の悩みを根本から解決!最も正確な自己分析のやり方」シリーズの第8回目の記事です(まず↑の記事から順にお読みください)。
今回は、エニアグラムのタイプ4(芸術家)の特徴についてお話します。
前回同様、自分や周囲の人たちに当てはまるかどうか考えながら読んでみてくださいね。
タイプ4の世界観と自己・他者イメージ
では、タイプ4の内面的特徴からはじめましょう。
9つのエニアグラムタイプの中で、最も理解が難しいのがタイプ4です。
なぜかというと、他のタイプが皆ある程度気にしてしまう常識や社会的な基準における優劣を、唯一あまり重要視しないタイプだからです。この傾向がどのように作られるのか、見ていきますね。
第2回「フロイトの意識発達理論とエニアグラムタイプ」の記事で、タイプ4は口唇期(0歳から1歳半)の「自分と自分じゃないものの世界」で「自分が消えてしまう」という不安をベースに形作られるとお話しました。
具体的には、お腹が空いたり、おむつを変えてほしかったり、抱っこしてほしいときに、いくら泣いても誰も来てくれないという経験です。そこで赤ちゃんは自分が「自分じゃないもの」に飲み込まれて消えてしまうのではないかという不安を感じます。
そこから、
自己イメージ:消えてしまう不安をもつ自分
他者・世界イメージ:自分を飲み込んでしまうもの
という自己・他者イメージが作られます。
タイプ4の好きなこと・嫌いなこと
そして、思春期になってタイプの影響が表れ始めると、自分の存在をしっかりとしたものとしたい、自分が存在していることを感じたいという欲求や消えてしまう不安を持ち始めます。
ただ、この存在確信への欲求や消えてしまう不安をストレートに意識できるタイプ4はまれです。多くのタイプ4は自分の存在を確信したいという欲求を次の3つの方法で満たしたいと意識することになります。
1つは、自分が周りの人たちとは違う個性的な人間であると感じることです。周りの人と比べて自分が特殊であれば自分は存在意義があると感じることができます。
他のタイプの人は悪い意味で突出することは避けたいものですが、タイプ4は悪い意味の突出でも、その他大勢に埋もれるよりはいいと感じます。この傾向はタイプ4の男性により多く見られ、女性はあまり意識していない方も多いです。
そして、2つ目は他人と理解しあい深い絆を築くことです。人間関係の絆が、消えてしまいそうな自分をこの世界につなぎとめる錨となります。
そして、ここがまたタイプ4の難しいところですが、タイプ4は社会的な価値や基準、立場を通した関係に偽善的な嘘くさいものを感じてしまいます。そのようなものを全て取っ払った魂と魂の純粋な絆を求める傾向があります。
なので、タイプ3(実業家)が好むような社会的立場に関連したパーティーなどでの広く浅くの付き合いは苦手で、個人的な深く狭くの付き合いを得意とします。
3つ目は、自分の感情や衝動を大切にすることです。感情や衝動のままに話し行動すること、感情や衝動が沸き上がることを好む傾向があります。
タイプ4は感情や衝動を感じることで自分の存在を確認したいという面があり、感情や衝動を自分と同一視することが多いので、それらを抑圧することは自分が消えてしまう恐怖につながるからです。
そして、逆にこの3つの要素が達成されないことを非常に嫌がります。つまり、自分がその他大勢の中の一人で、何の特徴もない平凡な人間であること、他人と絆が築けず見捨てられること、感情や衝動を抑圧されることです。
好きなこと | 自分が個性的であること・他人との絆を感じられること・感情や衝動を大切にすること、感情や衝動が湧き上がること |
嫌いなこと | 自分が個性的でないこと・他人との絆を感じられないこと・見捨てられること・感情や衝動を抑圧されること |
長所 | 人と違う考え方・深い思考・芸術的センスが高い・共感能力や感受性が高い・みんなに優しい |
短所 | 常識がない・社会的ルールを守らない・気分屋・非社交的・人間関係への依存・人を操作する |
趣味 | 芸術全般・哲学・思想・刺激の強いもの |
仕事 | 芸術関係・医療福祉関係 |
タイプ4の長所
以上の特徴から、独創的で人と違う考え方ができる、深い思考力がある、芸術的センスが高い、共感能力・感受性が高い、みんなに優しいなどの長所が生じてきます。
物事の深い面を探り芸術性が高いタイプ4ですが、タイプ1(裁判官)やタイプ5(研究者)と比べると、意外に、経験したものしか信じない現実的な傾向もあります。
タイプ4は感情を優先させ、社会的ルールや常識を重要視しないところがありますので、特に女性に多いのですが、不思議ちゃん・天然と言われる方もいます。
このような特徴を持つタイプ4が更に欲求・不安のコントロール度を上げていくと、タイプ4の長所を保ったまま、社会的基準・規則を取り入れ、常識を身に着け、他人に依存せず自立した人間となっていきます。
ただ、社会的基準や規則、常識を取り入れすぎ、タイプ4の特徴を抑圧してしまうと「他者化」に陥るケースもあります。このようなケースはタイプ1と間違われる場合もあります。
タイプ1がタイプ7(芸人)に同一化してしまうケースと同様、タイプ4の人はあくまでタイプ4に軸足を置くことが重要です。
タイプ4の短所
逆に、欲求・不安のコントロール度が低下していくと、常識がない、社会的ルールを守らない、非社交的、気分屋などの短所が生じてきます。
毎日同じ時間に学校や会社に行き、組織の一歯車として動くというのがタイプ4にとっては非常に苦痛なことになります。
コントロール度が下がるとこれができずに、留年・退学・退社という事態を引き起こしがちです。
また、他のタイプが予想もしないことで傷つきやすいので、対人関係も避けるようになります。
例えば、相手が(人間としての思いやりではなく)「社会的立場から」自分に優しくしていると思ったり、「〜した方がいいよ」と感情を抑圧するようなアドバイスされたりすることです。感情のコントロールも難しくなって、気分がころころと変わるようになります。
更に欲求・不安のコントロール度が下がっていくと、相手がどれだけ自分を思っているか確かめようとしたり、自分を見捨てないように操作したりするようになります。
タイプ2(看護師)も自分が愛されるため周囲の人を操作しますが、タイプ4がタイプ2と違うのは、相手に嫌われるようなことも平気でしてしまうところです。それでも相手が自分を見捨てないということを確かめたいんですね。
これが悪化すると境界性人格障害となっていきます。
タイプ4の趣味と仕事
では、タイプ4の趣味にいきましょう。
タイプ4の趣味はなんと言っても芸術関係です。音楽・絵画・文学・映画・デザイン・服飾・華道など美を追求するものすべてに渡っています。
音楽に関しては演奏や歌だけでなく、作曲の才能に長けています。これは、自分の内面に意識が向かう不安系タイプ1・4・7に共通している傾向です。
また、哲学や思想にも造詣が深い方が多いです。
刺激の強いもの、ホラー映画やエログロなどを好む傾向もあります。
そうなると、仕事も当然、芸術関係に適性があります。
少しでも美を追求する要素や創作の要素が入っている仕事が望ましいでしょう。組織に属するよりもフリーランスや起業する方がうまくいく場合があります。
また、人と人が人間として関わることができる医療や福祉関係の仕事も向いています。
いずれにしても、個性を発揮して自分の存在を感じられるもの、人との絆を感じられる仕事にやりがいを感じることができます。
タイプ4−3の外面的特徴・有名人事例
タイプ4—3は、基本的には常識にとらわれず我が道を行く、個性的でセンスのある人という雰囲気を持ちます。ただ奥底は非常に繊細で、存在の深淵を覗き込む恐怖感を抱えています。
タイプ3の要素が入っているので、他人からどう見られるかや社会的な基準での優劣も気になり、負けず嫌いの一面もあります。
顔の特徴としては、口がやや小さく、鼻と口の距離が近いという傾向があります。身体には特に特徴は見られません。
◉タイプ4−3の男性有名人
イケメン・いい人系 | 大野智・星野源・石田純一 |
陽的個性派系 | 松本人志・北野武・志村けん・太田光・有田哲平・桑田佳祐・GACKT・及川光博・美輪明宏・山田孝之 |
陰的個性派系 | 米津玄師・野田洋次郎・Fukase・川谷絵音・坂本龍一・小室哲哉・又吉直樹・庵野秀明(映画監督)・落合陽一(メディアアーティスト)・中田英寿 |
◉タイプ4−3の女性有名人
清楚系 | 山本美月・浅田真央・中谷美紀 |
天然系 | 綾瀬はるか・相田翔子 |
ボーイッシュ系 | 箕輪はるか |
キャリアウーマン系 | ギャル曽根・高見恭子 |
陽的個性派系 | 浜崎あゆみ・椎名林檎・きゃりーぱみゅぱみゅ・鬼束ちひろ・桃井かおり・大竹しのぶ・秋吉久美子・椿鬼奴・YOU |
陰的個性派系 | 橋本愛・中森明菜 |
タイプ4—3の男性有名人は、「イケメン・いい人系」、「陽的個性派系」「陰的個性派系」の3つの系統に分かれますが、「イケメン・いい人系」と陰陽の「個性派系」のイメージは大きく異なります。
タイプ4−3は他のタイプに比べても、最も系統間のイメージの差が大きいタイプです。
「イケメン・いい人系」は、「個性派系」に比べると「周囲と違う個性的な人間でいたい」という欲求が少なめで、人とのつながりを大事にします。
常識的意識はいずれにしても低めなので、どことなく透明感があって守ってあげたいような雰囲気となることが多いです。
「陽的個性派系」はタイプ4−3の王道と言えるタイプです。自分の個性を積極的に全面に押し出し、社会的評価も追求します。
「陰的個性派」は、人前に出ることをあまり好まず、あくまで作品で個性を発揮しようとします。
陰陽の「個性派」ともに、何らかの創作活動に携わる方が多く、特にタイプ1−9と同様作曲を行う方が多いのも特徴的です。
タイプ4−3の女性有名人も、基本的には男性と同様「いい人系」と「個性派系」に分かれます。
女性の場合、「いい人系」がさらに「清楚系」「天然系」「ボーイッシュ系」「キャリアウーマン系」の4つに分かれます。
「清楚系」は、男性の「イケメン・いい人系」と同様、「周囲と違う個性的な人間でいたい」という欲求が少なめで、透明感のある儚げな雰囲気となります。
「天然系」は、「清楚系」に常識的意識の低さと、社会的基準で劣っていたとしても個性を重視する傾向が更にプラスされて形成されていると考えています。
「ボーイッシュ系」は、社会的な基準である「女性らしさ」を素直に取り入れることに疑問を感じるタイプです。
「キャリアウーマン系」はタイプ4のセンスの良さや優しさ、繊細さを持ちつつ、タイプ3の社会的基準における優位性を追求する雰囲気が前面に出るタイプです。タイプ3−4よりもやや優しく柔らかいイメージとなります。
「個性派系」は男性と同様に陰陽に分かれ、特徴も男性と同じです。
☆タイプ4−3の具体例として、「『奥行きの子供たち』第2章「新世紀エヴァンゲリオン」抜粋記事」や「『鬼滅の刃』大人気の本当の理由とは?新ジャンル「役に立つメンヘラ」説」、「【新説】”メンヘラ”には3種類いる? 近年増えてきた「完全主義タイプ」」(ココロジー記事)などの記事があります。
タイプ4−5の外面的特徴・有名人事例
タイプ4−5もタイプ4−3と同じように、基本的には常識はあまり重要視せずわが道を行くタイプですが、眼の前の相手との関係を大事にするあまり、無意識に相手の雰囲気や口調、話の内容に自分を合わせてしまう傾向があります。
このような傾向から、タイプ4−5はすべての人に別け隔てなく接し、みんなに優しく包容力があるという雰囲気を持っています。
しかし、タイプ4−3と同様、その奥には傷つきやすさや繊細さ、自己存在の不確定感があり、それがまたタイプ4−5のなんとも言えない雰囲気を形作っています。
タイプ5の要素が入るので、余計に自分の内的世界に入り込みやすく哲学的思索を好むので、4−3よりもおとなしく純粋な雰囲気を持つことが多いです。
顔と身体に関しては、女性にはあまり特徴が見られませんが、男性にはいくつか特徴があります。
まず、顔は唇が厚い傾向があり、身体は体格がよく身長が高い傾向があります。「気は優しくて力持ち」という熊のような雰囲気を持つケースが多いです。また、体重の増減が激しい人もいます。
◉タイプ4−5の男性有名人
イケメン系 | 斎藤工・北村匠海・柳楽優弥・青木崇高・佐藤浩市・織田裕二 |
いい人系 | 船越英一郎・市村正親・富澤たけし |
個性派系 | 玉置浩二・平井堅・宮本浩次・神田伯山(松之丞)・辻仁成(作家)・尾崎豊・宮崎駿(映画監督)・新海誠(映画監督)・久石譲(作曲家)・中沢新一(宗教史学者)・河合隼雄(心理学者) |
厳格系 | 小籔千豊・堀江貴文(実業家) |
◉タイプ4−5の女性有名人
清楚・いい人系 | 土屋太鳳・石田ゆり子・仲間由紀恵・大橋真理子・小林麻耶・乙葉 |
個性派系 | MISIA・miwa |
タイプ4−5の男性有名人は、若手俳優中心の「イケメン系」、演技派俳優や芸人中心の「いい人系」、アーティスト中心の「個性派系」、社会的基準や善悪を重視し、厳しい雰囲気を持つ「厳格系」に分かれます。
タイプ4−5男性は、資本主義や科学文明が嫌いで弱者の味方となる傾向があり、発展途上国をバックパッカーで旅したりする人もいます。
また、「生きるとはなにか」「この世界とはどのようにできているのか」という究極的な疑問を持ちやすく、哲学・人類学・心理学・宗教学などにハマる方も多いです。
タイプ4−5は、4−3のような見た目を気にする部分もないので、自分の基準だけで際限なく内面に入りこむ傾向があります。
なので、突き詰めすぎると度を超えた、なりふり構わないハチャメチャな言動をすることがあります。ここから、統合失調症的な幻覚妄想を生じることもあります。
また、タイプ4−5男性は特に若いうちは女性に聖なるものというイメージを持ちがちで、かなりのロマンチストです。
そして、タイプ1−9、4−3と同様、芸術方面、特に作曲に著しい才能をもつ場合があります。
タイプ4−5の女性有名人は、「清楚・いい人系」と「個性派系」に分かれます。タイプ4−3よりも大人しく控えめで純粋な雰囲気を持っています。
特に「清楚・いい人系」の一部は、4−5男性よりも無意識に眼の前の相手に過剰に合わせてしまう傾向が強いケースがあります。また、男性・女性ともに他人の悪口を言うことを非常に嫌う方も多いです。