こんにちは、元臨床心理士の春井星乃です。
現在は、心理学・精神分析・エニアグラムを通して性格構造を明らかにする「イデアサイコロジー」を提唱しています。
「仕事・恋愛・人間関係の悩みを根本から解決!最も正確な自己分析のやり方」シリーズの第19回目の記事です(まず↑の記事から順にお読みください)。
さて、第1回から4回までで性格の構造、第5回から第13回まででエニアグラム各タイプの特徴をお話して、第14回からはみなさん一人ひとりの心理構造を詳しく探ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事では、今まで自分と向き合って掘り起こしてきたあなたの情報、つまり、エニアグラムタイプや乳幼児期・児童期の自己・他者イメージ、他者化の有無などを全体的に見て、いまのあなたが「性格の4つの層」のうち、どの層と同一化しているのか、その心の状態の型を探っていきます(「性格の4つの層」については「性格ってどうやってできるの?」、「心の状態の型」については「【自己分析はどこからはじめる?】心の状態の5カテゴリー」をご覧ください」)。
【フローチャート】あなたの「4つの層の同一化の型」は?
では、さっそく始めましょう。
今回の記事では、【エニアグラムタイプチェックテスト】と【チェックシート1〜6】までの結果をまとめて分析していきます。
以下のフローチャートに今までの結果を当てはめ、あなたの「4つの層の同一化の型」を出してください。
まず、第14回、15回の【エニアグラムタイプチェックテスト】【チェックシート1・2】の結果を振り返りましょう。あなたは自分のエニアグラムタイプが分かりましたか?分かった方は「YES」、分からなかった方は「NO」に進んでください。
次に、乳幼児期・児童期の世界・自己イメージに関する第17回記事の【チェックシート5】の◉5の回答を見ます。
①を選んだ方は①に、②を選んだ方は②に進んでください。<チェックシート3〜5>が書けなかった方は①の方に進んでください。
最後に、他者化の有無を調べた第18回記事の【チェックシート6】の結果を見ます。
エニアグラムタイプが分かっている方で(1)を選んだ方は(1)の方へ、(2)を選んだ方は(2)へ進んでください。
エニアグラムタイプが分かっていない方で(3)を選んだ方は(3)の方へ、(4)を選んだ方は(4)へお進みください。
すると、あなたのエニアグラム&世界・自己イメージ&他者化の関連の仕方の型が出ます。
「4つの層の同一化の型(A〜H)」の特徴
あなたのエニアグラム&世界・自己イメージ&他者化の関連の仕方の型は分かりましたか?では、AからHまでの各型の特徴を説明していきましょう。
あなたが当てはまった型の説明を読んでみてくださいね。
<A.エニアグラム型>
エニアグラムタイプが性格の中で大きな割合を占めていて、エニアグラムタイプに最もアイデンティティを感じているタイプです。
乳幼児期・児童期の自己・他者イメージも客観視できていますし、他者化もしていないので、ネガティブなイメージは行動化しないように抑え、ポジティブなものはうまく利用することができます。エニアグラムタイプの欲求・不安のコントロール度もやや高めとなることが多いです。
このタイプの方は今のままでも特に問題はありませんが、更に欲求・不安コントロール度を上げ、タイプの能力を洗練させることを目指せれば、公私ともにより輝く人生を送ることができます。
<B.エニア&他者化型>
エニアグラムタイプと他者化が性格の中で大きな割合を占めているタイプです。エニアグラムタイプは意識化されていますが、他者化により強くアイデンティティを感じている状態です。
他者化で安定している場合が多く、自分の深い部分と向き合うことを好まない傾向があります。一部、特に女性に多いのですが、乳幼児期・児童期の自己・他者イメージを分析していく過程で心理学や自己啓発系、スピリチュアル系に他者化していくケースもあり、その場合は自分と向き合うことを好みます。
しかし、どちらのケースでも意識がより他者化の内容に向かってしまうので、エニアグラムタイプの欲求・不安のコントロール度は中程度に留まることが多いです。
改善策としては、ここで他者化を意識化しましたので、まずそこに精神的安定を求めることをやめ、エニアグラムタイプによりアイデンティティを持てるようになることです。
難しい場合は、なにか乳幼児期・児童期の問題が残されているケースがありますので、もう一度向き合ってみるのもオススメです。
<C.エニア&乳幼児期・児童期型>
エニアグラムタイプと乳幼児期・児童期の自己・他者イメージが性格の中で大きな割合を占めているタイプです。
エニアグラムタイプは意識化できていますが、乳幼児期・児童期の世界・自己イメージの影響が強く、そのために無理をしすぎたり、何か問題が起こるとネガティブなイメージに動かされがちです。自分の内面と向き合う傾向があり、ネガティブなイメージから何らかの心の病気が生じることもあります。
そうでない場合も、エニアグラムタイプの欲求・不安のコントロール度は中程度からやや低めとなることが多いでしょう。このタイプの場合は、まず親子関係の問題が大きな影響を及ぼしていることが多いです。この影響を客観的に分析し徐々に自分から切り離していければ、エニアグラムタイプの欲求・不安もうまくコントロールできるようになっていきます。
一人で対処するのが難しい場合は、臨床心理士、精神的な症状がある場合は精神科医などの専門家に相談するのもよいと思います。
<D.3種混合型>
エニアグラムタイプ、乳幼児期・児童期の世界・自己イメージ、他者化の3つの影響が全て出ているタイプです。
乳幼児期・児童期の自己・他者イメージ、他者化の影響が同時にある時は、親の価値観に同一化している場合があり、それ以外の価値観を受け入れにくくなるケースもあります。
意識がエニアグラムタイプよりも他者化の内容や乳幼児期・児童期の世界・自己イメージに向くので、エニアグラムタイプの欲求・不安コントロール度は中程度からやや低めとなります。
このタイプは、エニア&乳幼児期・児童期型よりも精神的には安定して、表面的には問題がないケースが多いです。
改善策としては、やはり他者化や乳幼児期・児童期の自己・他者イメージは自分とは本質的には別物と意識し、エニアグラムタイプによりアイデンティティを持つようにすること、そして更に欲求・不安コントロール度を上げていくことです。
<E.自我同一性拡散型>
エニアグラムタイプ、乳幼児期・児童期の自己・他者イメージ、他者化の3つの影響が全て出ていないタイプです。
特に、【チェックシート3〜5】の答えがあまり具体的に書けなかったり、記憶が曖昧だったりする場合は、自我同一性拡散の状態である可能性があります。本人は何も問題を感じていないケースもありますし、漠然とした生きづらさを感じているケースもあります。
信頼できる話し相手がいる場合は、自分が日々感じたこと、考えたことを率直に話してみると、自分が見えてくることもあります。自分だけで対処することが難しそうなときは、臨床心理士のカウンセリングを受けてみるのも1つの方法です。
<F.他者化型>
他者化型には2種類のケースがあります。
1つは、乳幼児期・児童期の世界・自己イメージと向き合い自分とは別物と気づいたけれど、国や社会的地位、専門知識など「自分以外の崇高なもの」に同一化してしまっているケースです。
これは、【チェックシート3〜5】の記述内容をきちんと分析しその影響を克服している人が当てはまります(一部には、まだ無意識的に乳幼児期・児童期の自己・他者イメージの影響を受けているケースもあります)。
この分析過程で思考力に自分のアイデンティティの重心が移ってしまうと、心理学・自己啓発系・スピリチュアル系などの専門知識に他者化してしまう場合があります。このケースは特に女性に多く見られます。成長意欲が強いのですが、欲求・不安や感情よりも思考に興味が行ってしまうため、エニアグラムタイプの意識化がまだできていません。
もう1つは、乳幼児期・児童期の自己・他者イメージと向き合うことなく、他者化にアイデンティティを感じているケースです。
【チェックシート3〜5】で、特に重要だと思える記憶がないと感じていたり、あまり詳細に具体的な記述ができなかったケースが当てはまります。
このケースは特に男性に多く見られ、自分の深い内面と向き合うのが苦手な傾向があります。エニアグラムタイプと乳幼児期・児童期の自己・他者イメージという自分の内面に繋がっていないので、他人との人間関係においても深い関係を築くことは難しくなります。
自分を知らないので、他人を見る目も乏しくなります。また、何かネガティブなことがあってもネガティブと認知せず、見たいものしか見ないケースもあります。
改善策としては、やはり他の他者化の影響がある型と同様に、他者化や乳幼児期・児童期の自己・他者イメージは自分とは本質的には別物と意識し、他者化に安定を求めている原因をさぐること、そして、エニアグラムタイプを意識化し、そこにアイデンティティを持つようにすること、更に欲求・不安コントロール度を上げていくことです。
<G.乳幼児期・児童期型>
乳幼児期・児童期の世界・自己イメージの影響が強いタイプです。このタイプは他者化がないので、自分の内面と向き合う傾向があります。
この自己イメージを守るために無理をしすぎたり、何か問題が起こると乳幼児期・児童期の自己・他者イメージのネガティブな面に影響されがちです。
その場合、自分と向き合って懸命に改善策を探りますが、堂々巡りになりやすく、なんらかの心の病気が生じることもあります。そうでない場合も、普段は安定していても何らかの生きづらさを抱えているケースもあります。
このタイプの場合は、まず親子関係の問題が大きな影響を及ぼしていることが多いです。この影響を客観的に分析し徐々に自分から切り離していければ、エニアグラムタイプの欲求・不安も感じ取ることができるようになっていきます。
一人で対処するのが難しい場合は、臨床心理士、精神的な症状がある場合は精神科医などの専門家に相談するのもよいと思います。
<H.乳幼児期・児童期&他者化型>
乳幼児期・児童期の自己・他者イメージと他者化の影響が強いタイプです。
3種混合型でも書きましたが、乳幼児期・児童期の世界・自己イメージ、他者化が同時に強い影響力を持つ時は、親の価値観に同一化している場合があり、それ以外の価値観を受け入れにくい傾向があります。
そうでない場合でも、エニアグラムタイプも意識化されていないので、3種混合型よりも自分の深い本質に向き合いにくい傾向があります。
ただ一部には、乳幼児期・児童期の世界・自己イメージを分析していく過程で心理学やスピリチュアル系に他者化していくケースもあり、その場合は自分と向き合うことを好みますが、意識が乳幼児期・児童期の自己・他者イメージと他者化の内容に向かうので、エニアグラムタイプの意識化までは至っていません。
このタイプの改善策も、他の他者化の影響がある型と同様に、他者化や乳幼児期・児童期の自己・他者イメージは自分とは本質的には別物と意識すること、他者化に安定を求めている原因を探ることです。そして、エニアグラムタイプを意識化するところまで持っていけるとなお望ましいですね。
心の状態を改善するための3つの課題
このAからHの型は永遠に変わらないものではなく、自分で客観的に自覚し「変えたい」という意志を持てば変えていけるものです。
すでに各型の説明で改善策は少し書きましたが、もう少し詳しく、この心の状態を改善していく方法についてお話してみますね。
心の状態をよい方向に改善していくためには、共通して3つの課題をクリアすることが必要ということになってきます。
1つは乳幼児期・児童期の世界・自己イメージや他者化と向き合い、自分とは別物と認識しコントロール可能なものとすること。2つ目は、エニアグラムタイプを意識化すること、そして3つ目は、エニアグラムタイプの欲求・不安のコントロール度を上げることです。
では1つ目の、乳幼児期・児童期の自己・他者イメージや他者化を自分の本質とは別物としてコントロールするには、どうしたらいいのでしょうか。
もちろん、乳幼児期や児童期に起こった事実は変えられません。でも、それに対する捉え方は変えられます。そもそも、周囲の人たちの言動というのは、ほんとうはあなたの本質とは全く関係のないものなのです。
たとえば、両親がいつもケンカばかりしていたという子供時代を過ごした人がいたとします。子供というのは、両親に問題があると自分のせいだと思ってしまう傾向があるので、「自分はダメな子だ」「自分は愛されない」という自己イメージを作ってしまいます。
でも、大人の冷静な目から見れば、それは子供のせいでは全くありませんよね。「お母さんがこう言った」とか「友達にこう言われた」というのは、あくまでお母さんや友達のその時の状況の中から生まれたものなので、自分の本質とは本来関係のないものなのです。
また、自分が何か失敗したという事実があったとしても、それを悔やみ自分を責め続けるという対処の仕方もあれば、「あれはあれでいい経験になった」、「より大事にならなくて良かった」などポジティブに捉え直すこともできます。
このように、乳幼児期・児童期に作られる「自己・他者イメージ」というのは、まず向き合って意識化し、自分の本質とは本来関係のないものと理解してポジティブに捉え直すことで、影響力を減らしていくことができます。
また、例えば長男長女で、しっかりしたお姉ちゃんお兄ちゃんでいなければならなかったというようなケースでは、それと自分の本質とは別物ときちんと意識した上で、責任感の強さやリーダーシップなどの能力は適度に使っていくということができます。
他者化の影響が強い場合は、乳幼児期・児童期の自己・他者イメージと向き合う前に、まず他者化を意識化してそこから抜けようとする意志が必要になってきます。
その後、そこに安定を求めていた原因(多くは乳幼児期・児童期の自己他者イメージにあります)と向き合い、エニアグラムタイプを意識化し、欲求・不安コントロール度を上げていくことで、やめることができます。
自我同一性拡散型や他者化、乳幼児期・児童期の自己・他者イメージの影響が強すぎて自分だけで対処することが難しそうなときは、臨床心理士のカウンセリングを受けてみるのも1つの方法です。
自分のエニアグラムタイプを意識化するには?
では、自分のエニアグラムタイプを意識化するにはどうしたらよいのでしょうか。
E型からH型それぞれで細かい対処法は異なりますが、基本的には、自分の心の深い部分と向き合いながら様々な経験をすることで、そこから生まれる欲求・不安のパターンを注意深く見つめ、記憶していくことが重要です。
欲求や不安は外部の刺激がないと生じてこないので、やはりいろいろな経験や情報と接することが必要なんですね。
たとえば、大きめの本屋さんで何も考えずにぷらぷらするというのもオススメです。そこで、感情が動いたものを片っ端から読んでみるとなにか気づきが生まれるかもしれません。
また、その他の日々の生活や人間関係から生じる欲求・不安や感情・思考・行動をメモしておくというのもいいですね。信頼できる話し相手がいる場合は、自分が日々感じたこと、考えたことを率直に話してみると、自分が見えてくることもあります。
それがある程度たまったら、再度【エニアグラムタイプチェックテスト】【チェックシート1〜2】をやってみてくださいね。
そして、最後に、3つ目のエニアグラムタイプの欲求・不安のコントロール度を上げる方法についてですが、このコントロール度を上げるためには、まず、自分のエニアグラムタイプの欲求に沿った目標を決め、その過程で必要なことを不安に影響されずにこなしていくことが必要です。
最初は怖いし、失敗もすると思います。かなりの勇気を必要とするかもしれませんが、場数を踏んでいくにつれて、ラクにこなせるようになっていきます。
言葉で言うのは簡単なのですが、実際行動を起こすとほんとにいろんなことと向き合わされますよね。でも、それを泣きながらでも一つずつ修正しながらこなしていく度に、徐々に欲求・不安のコントロール度は上がって、以前できなかったことがそこまで苦ではなくなってきます。
今回の記事は第14回から18回の実践編の中間まとめ的な記事でしたが、いかがでしたでしょうか。少しでも、あなたの心の状態を明確にし、適切な対応策を取るためのお手伝いができていれば嬉しいです。
【チェックシート3〜6】がどうしても書けなかったり、いまいち結果に納得がいかないという場合でも、時間を空けて余裕のある時にもう一度挑戦してみるとまた新たな気づきがあるかもしれません。ぜひ再度やってみてくださいね。
さて、次回は今回見てきたエニアグラムタイプ、乳幼児期・児童期の自己・他者イメージ、他者化の影響の更に基盤となっている、遺伝の影響について探っていきます。